「第3回メルヘンアニメ・コンテスト」受賞作品

受賞作品の紹介

優秀作品賞(2作品) 賞金50万円

<受賞作品>
「Frau Holle」
監督 Thomas Schneider-Trumpp(トーマスシュナイダートランプ)
12分50秒(ドイツ)


この作品はグリム童話に取材した人形アニメーションであり、継母と姉にいじめられる少女を主人公にしている。しかし、昔話にありがちなパターンどおりにいじめ手のふたりを懲らしめて終わるのではなく、最後には姉が主人公と心を通じ合うようになる。そこで笑顔を交し合う姉妹の表情は明るく、本コンテストが目指すべきぬくもりを体現した愛すべき作品となっている。また、この作品の人形アニメーションの技術は破格にすばらしく、普通なら硬いはずの人形たちの顔が縦横に動き、台詞に合わせて口を動かせて喋り、何より豊かな表情を伝えている。審査委員の中には本作品を最優秀賞に押す声も高かったが、しかし、不用意なデジタル合成を用いてせっかくの人形アニメとの統一感を壊すなど、作品全体の構成センスにわずかに不足が感じられた。
そこで、最終的に一段低い優秀作品賞を授与することに決した。当コンテストのグランプリを得る作品には、一定の風格が必要なのである。(片渕須直)

「THREE PIECES OF SINCERE ADVICE」
監督 LI JIE(リーチェ)
15分40秒(中国)


中国ならではの木版画を使ったアニメーションで、黒と白の陰影と彫刻刀による鋭い線を生かした力強い作品である。人物や風景、水や火の自然現象にも木版画の様式を生かしたアニメーションの工夫がされている。
20年の奉公を終えた男が帰郷する際、主人から給料の代わりにもらった3つの忠告を守り、家路に辿り着いた末に得たものは…という物語であるが、言葉やセリフの力に頼らなければストーリーの展開が理解できないという点で最優秀賞を逃した。
しかし作品にみなぎる力強さ、木版画で統一された世界観は堂々たる厚みを持って第1級の作品と言える。(小田部羊一)


審査委員特別賞(2作品) 賞金15万円

<受賞作品>
「UMMEMO(The Echo)」
監督 Denise Robertson(デニスロバートソン)
2分30秒(南アフリカ)


昨年に引き続き、遠隔の国南アフリカからの応募作が今年もあった。その演出・作画技術をアニメーション先進国に比較すれば、やや差が見受けられるのは致し方がない。しかし、現地の民話に取材したというこの作品には素朴で味わいが存在している。それはかえってそれらアニメ先進国で忘れられがちな何かを思い出させるものであり、改めて目を見開かせられる。それは、「ジャパニメーション的アニメーション」に席巻された中であえて観客としての子どもに眼を向けなおそうという本映像祭とコンテストの趣旨と照らし合わすとき、大きな意味をもつ。よって、この作品に審査委員特別賞を与えることとした。付け加えるなら、この作品の美術はとても美しい。(片渕須直)

「ナイトフライト」
監督 岡本(おかもと)まい
4分57秒(日本)


傑作である!無駄のないシンプルなキャラクター造形は申し分なく、リズミカルで心地好いアニメートと相まって、女の子の切ない心情と都会の孤独を見事に表現している!見終わった後に、心の中に何ともいえない暖かさが残る。作者の並々ならぬカ量を感じさせるアニメーション作品である。(片山雅博)


奨励賞(3作品) 賞金10万円

<受賞作品>
「the way」
監督 Jung Min Young(ジョンミンヤン)
14分(韓国)


この作品は道の終着点の前で、戸惑ったりつまずいたりする人々に挫折や失望ではなく観照と余裕を教えてくれる、人生の道程を悟らせるような物語です。穏やかな雰囲気ですが、人生という深い意味を考えさせられます。
鉄道の踏切という限定された空問で生きている踏切を見守る主人公の日常は、決して華々しいものではありません。しかし、大事な何かを待ち続け、さらに人のカになろうとする主人公でこの作品は心温まる美しいストーリーではないかと思います。
誇張されず、キャラクター自体の生き生きとした生命力と繊細な仕草が醸し出すストーリーは表現力豊かなものです。人形で表現されたストップモーション風のアニメーションに東洋画の雰囲気が感じられた所にも注目して下さい。(李龍培)

「Color memory」
監督 Zhou Jing Si(ジョウ ジンス)
5分(中国)


老いと成長…誰でもが通過する人生の時間経過を、抑制のきいた透明感のある色使いでバックを、そしてメインキャラクターはほんの一部に色を載せるのみで表現しています。
そのことでかえって母子の深い情が強調され、見る者の心を温かい気持にさせたり又切ないものにしたりします。
このアニメを、導入と終章で実写フィルムを使うことによって、この話が唯のメルヘンチックなものではなく現実感のあるものと意識させます。(篠田英男)

「MYHOME」
監督 児玉徹朗(こだまてつろう)
5分30秒(日本)


本作は日本の学生の作品であるが、一般にこの年代の作るものは観念性を帯びやすい。しかし、この作品にそのきらいはみられず、良質なエンターテイメントを目指しているという点で評価できる。本作は3人の中年男性の悲哀を主題としており、必ずしも子どもを対象に作られているわけではないのかもしれないが、しかし登場人物たちの心情は子どもの観客もじゅうぶん自分のものとすることができる。本コンテストが謳う「メルヘンアニメ」の意味を「子どもの感受性を基点とし、子どもから大人に至る万人が観賞の歓びを享受出来るアニメーション」と考えるならば、本作「MY HOME」の目指す姿勢はまことに好ましい。(片渕須直)


飛騨まんが王国 国民賞(1作品) 賞金10万円

<受賞作品>
「ドロップ」
監督 鈴木康昭(すずきやすあき)
2分14秒(日本)


「ドロップ」…子どもの頃を思い出す懐かしい品物の名前。
今度は、何色のドロップが出てくるのだろうと、期待をしながら缶をガラガラと揺する楽しさを思い出させてくれます。
そのドロップが、女の子と男の子の間をつなぐ小道具に、はたして女の子の気持ちは届くのだろうか。
ちょっと大人の味がする淡い恋のストーリーは、これも又、誰でも一度は経験した懐かしい思い出に、観る人を誘ってくれます。
画面いっぱいに、パステルカラーの洪水と万華鏡の世界がひろがり、まるで秋の風に舞う飛騨の山里の色とりどりの木の葉を想像させてくれます。(篠田英男)


柿とバラの町・大野町賞(1作品) 賞金10万円

<受賞作品>
「The Umbrella and a Loach」
監督 Kim Hyun-Joo(キムヒョンジョ)
4分(韓国)


この作品を見てすぐに頭に浮かんだのは、亡くなった渡辺文雄館長のことです。渡辺さんだったら、この作品を何かの賞に選ばれたに違いないと…
まだ、公害などがなく、自然がいっぱい残っていた郊外や田舎の川で、遊んだセピア色の世界を観ているようなこの作品。子供たちも、今の世の中のように様々なプレッシャーも無く、伸びやかに過ごせた牧歌的な生活を彷彿とさせる作品です。この作品の雰囲気は、どこかで経験したなあと思ったら、柿とばらのまち大里予町の郊外でした。(篠田英男)


セルシス賞(1作品) 賞品

<受賞作品>
「RETAS!LITE Debut」「CLAY TOWN」「奈良鹿物語」
監督 青木純(あおきじゅん)
1分38秒(日本)


傑作である!スピーディでキレがあり、なおかつ物語の意外な展開に思わず笑いころげてしまう。さらに傲慢で身勝手な人問の愚かさを、鹿が笑いとばしているようにも見える!卓越したユーモア感覚と、風刺感覚に溢れたアニメーション作品である。(片山雅博)


※最優秀作品賞、飛騨メルヘン賞は該当なし